コッテングリュン(Kottengrün)という村にある初代工場。現在は、使われていない。
現社長パトリック・フォーゲル
(Patrick Vogel)氏
昔からの足踏みミシンを使って、
機械織で製作されたレースを
一つ一つ丁寧に手作業で組み合わせていくイングフェルデさん。
フォーゲル社は1920年に設立。テーブルクロスやレースオーナメントなどにおいて、ヨーロッパ全土はもちろんアメリカやオーストラリアなどでも販売し、これらの製造をリードしてきました。すべての商品は伝統的な方法で製作されており、職人の腕と、素材の良さで高い評価を得ています。
現社長パトリック氏は2002年にマイスター・クラフトマンの資格を獲得したのち、5代目社長に就任しました。
パトリック氏の母イングフェルデ・フォーゲルさんは、1968年からテキスタイルや刺繍等の仕事を始め、両親や祖父からたくさんのレース製作に関する知識を学びました。
彼女は前社長であり、この工場において他の職人の指導者であると同時に、フォーゲル社の最高の職人です。現在は、レース製作の総責任者として息子のパトリック氏を補佐しています。
イングフェルデさんはレースを愛しています。新しいアイデアやデザインを展開する時に、彼女は、フォーゲル社で働く社員たちに新しい刺激を与えています。そして、彼女自身も「働く仲間や、お客様とレースについて語り合うことは、たくさんの喜びをもたらしてくれる」と話してくれました。
何よりも、昔から伝わる家族の伝統をとても大切にしている彼女は、それを次の世代、息子のパトリック氏に引き継いでいくことを、特別で大切なことだと信じています。
フォーゲル社ではケミカル・レースという手法を採り入れています。水溶性の糸で織られた生地に機械で刺繍を施し、刺繍された生地を液体に付け生地を溶かすと基布は無くなり、刺繍糸だけで構成された模様が残ります。1910年から伝わる機械をアップグレードしながら使用していましたが、数年前にコンピューターで制御できるように改良されました。1回の工程で3メートル×13.5メートルの生地に刺繍を施すことができます。製作効率はアップしていますが、昔から伝わる機械と全く同じ工程で作業は行われています。
そして、最後は人の手で、ひとつひとつ仕上げていきます。

フォーゲル社は、ベルリンから300km南、ミュンヘンから300km北の旧東ドイツのザクセン州・ハマーブリュッケ(Hammerbrücke)という人口約1400人の小さな村にあります。600~950メートルの丘が連なるフォクトランドという地域。すぐ隣はチェコ共和国です。
フォーゲル社から10kmほど離れた場所にあるのが、フォクトランド・アリーナと呼ばれる有名なスキーのジャンプ台です。そこでは年に一度、犬ゾリのお祭りが行われています。ジャンプ台近くの山の上からみた夜景は、まるで絵本の1ページを見るような美しさ。日本からの観光客は、まだほとんどいないそうです。